研究内容Research

私たちの講座では、新興RNAウイルスの感染メカニズムや重症化因子の解明、ウイルスRNAを起点とした宿主応答の制御機構の解析、エクソソームを介したウイルス情報伝達と病態形成の研究など、フィールドでの調査・臨床観察とラボでの分子解析を一貫して行う研究を推進しています。これにより、感染症の予防・診断・治療につながる新しい知見の創出を目指しています。当講座の大きな特色は、国際的な連携体制のもとで感染症研究を展開している点です。アジアやアフリカをはじめとする地域での共同研究を通じて、現場の課題と基礎研究を結び付け、国際社会に資する新しい知見を発信しています。

さらに、東京慈恵医科大学ウイルス学講座が伝統的に取り組んできたヘルペスウイルス研究についても継続的に推進しています。ヘルペスウイルスは神経潜伏性や再活性化など独自の病態を持ち、基礎研究や臨床応用の両面で重要なモデルです。当講座では、長年培ってきた知見と技術を活かしつつ、RNAウイルス研究と相互補完的に展開することで、ウイルス学全般の理解をさらに深めています。

このように、従来の伝統的研究と最先端の新規テーマを融合させることで、世界規模で現場とラボの両方からウイルス学の新しい扉を切り開き、次世代の感染症対策や診断・治療法の開発を推進しています。

フィールド調査

1. 国際共同研究によるフィールド調査研究

当研究室は、アジアやアフリカをはじめとした国際的なネットワークを活用し、現場でのフィールド調査や疫学研究を推進しています。アウトブレイクの発生地や医療現場で得られるデータやサンプルを基盤として、感染症の実態を的確に把握し、分子メカニズム研究と結び付けることで、グローバルな感染症対策に資する成果を創出します。

  • Arai et al., PLoS Pathog. 2019 (DOI:10.1371/journal.ppat.1007919)
  • Arai et al., PLoS Pathog. 2016 (DOI:10.1371/journal.ppat.1005583)
  • Watanabe et al., EMBO Rep. 2013 (DOI:10.1038/embor.2012.212)
  • Watanabe et al, Trend Microbiol. 2012 (DOI:10.1016/j.tim.2011.10.003)
臨床現場

2. 新興RNAウイルスの感染メカニズムと重症化因子の解明

新興RNAウイルスは、概して重篤な感染症を引き起こします。本研究では、これらのウイルスがどのようにして宿主細胞に感染し、重症化を引き起こすのかを最先端の分子生物学技術を駆使して、分子レベルで解析します。特に、重症化の原因となる因子や変異を特定し、感染症の予防や重症化リスクの評価に役立つ知見の獲得を目指しています。

  • Oka et al., iScience. 2023 (DOI: 10.1016/j.isci.2023.106954)
  • Isobe et al., Commun Biol. 2022 (DOI: 10.1038/s42003-022-04170-6)
  • Arai et al., J Virol. 2021 (DOI: 10.1128/JVI.01582-20)
  • Arai et al., J Virol. 2020 (DOI: 10.1128/JVI.01210-20)
  • Arai et al., J Virol. 2019 (DOI: 10.1128/JVI.01969-18)
顕微鏡解析

3. ウイルスRNAの挙動とそれを起点とする宿主応答の研究

ウイルス感染時、宿主細胞はウイルスRNAを検知して防御反応を起動します。本研究では、ウイルスRNAがどのような挙動でされ、宿主応答を誘導または回避するかを解析し、ウイルスと宿主の相互作用の仕組みを解明します。これにより、感染症治療や免疫制御の新たな戦略の構築を目指しています。特に、ウイルス感染時におけるウイルス短鎖RNAの挙動とエクソソームの担体としての役割を明らかにし、病態形成や免疫応答への影響を解析しています。

  • Arai et al., iScience. 2023 (DOI: 10.1016/j.isci.2022.105742)
  • Watanabe et al., J Virol. 2018 (DOI: 10.1128/JVI.02004-17)
  • Watanabe et al., mBio. 2015 (DOI: 10.1128/mBio.00081-15)
顕微鏡画像

4. ヘルペスウイルスの感染・潜伏・再活性化メカニズムの解析

東京慈恵医科大学ウイルス学講座で長年にわたり推進してきたヘルペスウイルス研究を継続し、神経潜伏や再活性化など独自の病態を分子レベルで解析しています。RNAウイルス研究との相互補完により、ウイルス学全般の理解をさらに深めます。また、伝統を受け継ぎつつ、新たな技術を導入して研究を発展させます。

ヘルペスウィルス

5. 感染症の予防・診断・治療につながる分子標的の探索

ウイルスや宿主の分子機構の理解を基に、感染症の新しい予防法、診断法、治療法を開発しています。基礎研究の成果を臨床応用に橋渡しすることで、感染症対策の開発に直接貢献することを目指しています。

ラボでの研究
ラボでの研究